長い長い冬が終わって、
長い長い春が終わって、
長い長い夏が終わって、
永い永い秋で終わった。
『フユに始まりアキで終わる』
『アレですら彩を持つわけか』
恋人は入院していた。
夢のようでいて、永遠に似た時間――
恋人の恋人は、それによってあらゆるものをを磨耗させ、
ついには恋人の他に恋人をつくった。
恋人は息を引き取った。
人は死ぬんだ。
恋人は一体何と闘っていたのだろう。
……ああ、恋か。
『闘いはいつも敗北しか生まない』
『そして世の中には不戦敗という言葉もある』
『泣いてよいかえ?』
『……生きろ(何)』
恐怖の定義を訊かれて、私は未知のものと答えた。
では私が怖いですかと訊かれて、私は「はい」と答えた。
私も貴方が怖いですと言われて、私は何も答えなかった。
私達は笑い合った。
その未知なる感情・動作との邂逅に、
けれど不思議と恐怖はなかった。
『解り易』
『黒薔薇な感じで』
都会病という病が流行した。
それは、都会にだけ蔓延した病だった。
多くの人が亡くなった。
田舎の人は笑った。
『社長病でも貴族病でも××××病でも可』
『根底原因が何処に存在するかは別としてって事だな』
『うみゅ』
『茶碗割れちまったよ』
『また買えば?』
『思い出が詰まってんだよ』
『茶碗はアンタのことなんか覚えてないよ』
『そうだな……茶碗は何れ壊れるんだよな』
『そうね』
『けれど淋しいよな』
『そうね』
『また乞われるんだろうな』
『そうね』
『どうしてコワレルのかな』
『コワレルためなんじゃないの?』
『……いきてるんだな』
『環の廻りではね』
『欠けた物も、君も僕も』
『どっちに取るかで結末の観え方全然違いますね』
『アッシは普通に一つしか観えない』
『……皮肉じゃなしに、流石です』
『もっと褒めれ』
チョコが好きな女の子の恋人が、
暖めたチョコを彼女に飲ませた。
彼女はチョコを嫌いになり、
恋人は彼女を嫌いになった。
『昔、端的で意味不明って言われて作品』
『ほう』
『比喩っす。チョコレートでなくても、
常温で状態が変化する物であれば何でもいいですって言ったら解ってもらえた』
『素晴らしい読み手ですね』